2014年12月6日土曜日

ゲーム小ネタ:A列車で駅間距離がばらばらの単線でうまくダイヤを組む

 A列車で行こうシリーズなどの鉄道経営シミュレーションゲームで鉄道路線を引く場合、一般的には上下線の軌道を別にした「複線」、起動を環状にして一方向だけに進行させる「環状線」が主に使われます。
現実の鉄道路線を見ると、運輸量の多い都心部や都市間を結ぶ大動脈では複線や環状線、ローカル線などの運輸量の少ない路線は単線が多いです。
もちろんゲームでも、複線や環状線で多数の列車を往来させると比較的あっという間に市街地が形成されます。

ただ、すべての路線を複線などで構成すると「どこにいっても同じ街並み」という面白みの無い風景になって飽きてしまいがちです。
もちろんゲームの「攻略」としては悪くは無いのですが、「楽しむ」という意味では少しさびしい感じがします。

 そこで、乗客の乗り降りがある駅の移築をしないで、駅間の違う単線区間でうまくダイヤを組むにはどうしたらよいのか、ということについて、自身のやり方を書いてみます。
ほかにも色々やり方はあるでしょうが、自身はこういったやり方をしています、ということで。

 少々長いのですが、お付き合いいただければ、と思います。


<はじめに>

 よく単線区間で車両がすれ違うダイヤを組む場合に用いられるのが、「待避専用の分岐線」を引くやり方です。

しかしそればかりを用意している単線は、実質複線と変わりません。
もちろんコストカットの方法としては無くはないのですが、ポイント設定ミスや車両更新などでダイヤが狂いやすく、うっかりすると収益に取り返しのつかないダメージを与えることもあります。
それならはなっから複線にしたほうがいろいろな手間が減って効率的になります。

 次に考えられるのは「信号場」を設置することです。
これなら単線をできるかぎり活かしながらすれ違いを設定する事ができ、しかも住民の少ないローカル線なら雰囲気も出ます。

しかしあまりこれを市街地で乱用しすぎるのも問題になります。
減価償却費などの所有資産にかかる経費が増加したA列車で行こう3Dでは、利益の出ない物件を持ちすぎるのはあまりよくありません。
それなら普通の旅客駅にしたほうが儲けにつながります。

 ということで、退避用分岐線や信号場を極力無くし、現実の田舎町を抜けるローカル線をイメージした「各駅で待ち合いを行う単線ダイヤ」を組むことを考えます。


 実際にそういった路線を組んだ「企業倒産のつめあと」(応募原作版)を例にして説明しましょう。


<導入>

 まずは路線図から。
これがシナリオ応募するためにいばらクリアした直後の路線図です。
もし配信シナリオを持っている人は、通常のサテライトと見比べて見てください。

「企業倒産のつめあと」路線図

 わかりづらいと思いますが、すべての線路が単線をあらわす「細い線」で構成されています。
太い線になっているのは「駅(旅客・貨物・車両倉庫)」がほとんどです。
ちなみに城址公園付近の区間(地図の右下あたり)のみ太くなっていますが、ここだけ地下鉄になっているため複線にしています。

実際に、マップ北側に有る盆地に広がる「四麻」という町の中心付近の写真をお見せします。
ここは初期設定でバス停があるところで、上の地図では中心から伸びる青いラインのふくらみが連続している部分です。

四麻駅付近の空撮図

プレイした人はわかると思いますが、このあたりは田畑をつぶすことで比較的複線や環状線を作りやすい地形になっています。
しかしあえてこの区間も南北に貫く単線軌道のみで形成しています。

なお、画面左下に分岐ポイントがあって待避線になっているように見えますが、ここは貨物専用駅と車両倉庫につながる軌道で行き止まりです。
ちなみにマップ全土にわたって、車両倉庫は片側からしか出入りできない軌道設計をしています。


<すれ違いダイヤを組んでみる>

 ではここから、実際に単線ダイヤを組んだときのやり方を書いていきます。
今回は最初の路線図で青い線で示されていた、「しまブルーライン」のダイヤを見てみましょう。

しまブルーラインダイヤ表 しまブルーラインダイヤ表2

ポイントが多くて見づらいと思いますので、およその所要時間を抜き出したものを下に掲載します。

所要時間:霜 15 北 25 三 51 有 19 四 19 一 60 隣

 これを見ると、最短の「霜白<>北霜白」間がたったの15分なのに対し、反対側の折り返し点にあたる「一美<>(北)喬和」間は60分かかっています。
また路線の中間にある「三ツ丘<>有園」間も50分以上を要します。

このままダイヤをろくに組まないで車両を走らせると、よほど運が良くなければ路線の中間あたりで正面衝突してしまいます。
もし何とかすれ違えたとしても、3編成以上はとても運行できません。

 では、同一時間帯に3編成以上が走行できる単線ダイヤを組むにはどうすればよいでしょう。

軌道上ですれ違うことのできない単線区間では、正面衝突の恐れがある場合はどちらかの車両を駅や信号場などに停車させなければなりません。
ちなみにこれを手軽に実現できる「指定ホーム停車後に発車」「指定ホーム発車後に発車」という設定もありますが、時間が不定になるためダイヤのコントロールがやや難しくなります。

時刻や発車間隔を指定するやり方でぱっと思いつく一番単純な解決方法は「すべての駅の発車タイミングを最長区間に揃える」ことなのですが。。。

簡易調整後:霜 70 北 70 三 70 有 70 四 70 一 70 隣 *片道約420分

たとえば例のしまブルーラインの場合は、上のようにすべての発車間隔を70分おきで固定することになります。
しかしこれだと、もともと最短4時間程度で運行できる区間に7時間もかけてしまうことになります。

24時間フル運行しても1日1往復半しかできないため、とても実用的な路線とはいえません。
高速の車両を導入して回転数をあげる方法もあるでしょうが、それならはなっから複線に切り替えたほうが建設的です。

 そこで、「複数駅をひと括りにしてすれ違い駅を減らす」という方式を導入してみます。

しまブルーラインの例では、「霜白<>三ツ丘」と「有園<>一美」の区間が2駅あわせても所要時間が短く、駅の停車時間を合わせても最長の区間より所要時間が短くなっています。
そこで北霜白と四麻はすれ違いに使用しない駅とし、残る5駅の発車時刻が同じになるよう調整しなおしてみます。
すると。。。

再調整後:霜 70 三 70 有 70 一 70 隣 *片道約280分

最初の仮ダイヤよりも所要時間が短くなり、280分、約4時間半強で終点までいけるようになりました。
これなら1日最大で2往復半となるため、より現実的なダイヤになりました。
これをベースに調整したものが最初に掲載した時刻表のダイヤです。

 ちなみに今回は比較的均等に設定できる例でしたが、路線によってはこういった組み合わせを作りづらいこともあります。
そのような場合は、最初のダイヤのようなやむを得ず長時間の停止をする駅を入れたり、中間に駅などを増設したりなどの工夫をしないとうまくダイヤが組めないこともあるかもしれません。
算数(というか数学?)が苦手な人にはちょっと難しいかもしれませんね。

さらに特定の時間帯に増発便を運行したいとか、貨物列車などの異なる種類の車両を混在させたいといった場合は、ここからさらに細かい設定を入れていくことになります。


<編成を増やす>

 すれ違いできるダイヤが組めたということで、次は収益が増えるように運行本数を増やしていくことにします。

複線区間であれば、緊急停止が発生しない程度の密度までならいくらでも増発することができます。
しかし単線区間は、原則として駅間の軌道を上下いずれか1本の車両しか走行できません。
進行方向が同じなら2本以上走行させることもできますが、その場合は車両間を大きく開けるか、速度の速い車両を選考させなければなりません。

ここでは同じ速度の車両を使用しますので、同時間帯に上下方向から車両が進入する可能性がある場合、片方の車両を駅に停車させてもう片方が入線または通過するのを待たせることになります。
そうすると、車両を最大限使って運行する場合の理想状態は「始発・終着駅以外では”車両のいない駅”か”上下2編成が入線する駅”が交互にできる」となります。
車両のいないすれ違い駅が連続しているなら運行本数にまだ余裕があることになりますし、逆に2編成の入線する駅が連続しているなら過密すぎることになります。

このことから適切な最大編成数を考えると、最大数は停止ホーム総数の半分、つまりは

 (始発駅+(すれ違い駅の数×2)+終着駅)÷2

となります。
まあややこしいことを置いといて平たく言えば、「すれ違い駅の数+1」ってことですね。
なお、この計算ですれ違いに使用しない駅を数に入れてしまうとひどいことになるので注意してください。

「しまブルーライン」の例にこれを当てはめてみると、すれ違い駅数は「3」なので、最大編成数は3+1で「4」となります。
こちらの記事 に時刻表があるので、実際に見てみるとわかりやすいかもしれません。
なお、6:30または6:40始発便の本数が運行本数になります。


<最後に>
 優等列車のように速度の違う列車を同一軌道に導入する場合、上記のすれ違いだけではなく「追い抜き」も考慮しないといけなくなるため、さらに複雑になります。
結果として普通列車は優等列車の合間を縫うような待ち合わせの多いダイヤ繰りとなってしまい、1日の本数が大幅に減ります。
現実でも特急や快速といった優等列車が多く走る単線区間では普通列車の本数が少ないうえに比較的短い区間での折り返し運行が多い特徴があります。

また、3編成以上(各駅上下+優等、など)が同時に停車する可能性の高い駅では、ホームの増設も必要になります。
優等列車を導入したいと思う頃には周囲が発展して土地買収が困難になることも多いと思うので、あらかじめそれを見越して土地を確保しておくなどの工夫が必要です。

 ところで勘のよい方なら路線図や時刻表の画像を見てわかると思いますが、霜白から三ツ丘までの区間には、しまブルーライン(青)だけでなく霜白本線(黄)という別の旅客路線も乗り入れています。

実はこれ、このマップの元になったローカル線をできるだけ再現してみた結果こうなりました。
こうなると、乗り入れる路線すべてですれ違い設定を調整しなければならないのでさらに面倒になります。
これについてはまた別の記事にて。

以下おまけ。

 記事で使ったA列車で行こう3Dシナリオコンテスト入賞作「企業倒産のつめあと」は、他の入賞作と違って比較的簡単だという話がちらほら聞かれます。
たしかに他の作品とは違い、ある意味「A列車の王道」なプレイスタイルをすると初見でもクリアできてしまうためそういった評価になってしまうのかもしれません。

 実はこのシナリオ、「単線区間オンリーのノスタルジック路線でもクリア条件をぎりぎり満たせるように」という裏コンセプトを設けて難易度調整をはかり、それを実証したうえで応募しました。
(本当に期限ぎりぎりでしたけどね^ー^;)
そのため他のシナリオより「いばら」の難易度が低めになるという調整結果となっています。

もしチャレンジたい方は「複線鉄道禁止、貨物専用線禁止(旅客路線に乗り入れるまでの区間は設けてよい)」という縛りでクリアまでプレイしてみてください。
公共交通の低利用率も相まって正直かなり難易度が上がると思います。

 あと城址公園の高台にトンネルを掘って鉄道を通せば全部単線にできたのですが、景観があまりにもひどくなったのでやめたのでした。
あと「地下に分岐線があるのはちょっと。。。」というこだわりもありました。

2 件のコメント:

ひだじ さんのコメント...

作者様の企業倒産のつめあとのライバルデータを公開していただけないでしょうか

十木獅音 さんのコメント...

作者です。

3DSNEO版のライバルデータを画像掲示板サイトに公開したので、よろしければどうぞ。
この記事で投稿されたデータとは違いますが、できるかぎり近しい路線図にしつつ、特急導入やスタジアム・タワー建設など泣く泣く見送った要素を盛り込んだものになります。
*DLC版シナリオには対応していませんのでご了承ください

公開場所:A列車で行こう3DS 記事No.4583から4588(画像6枚)
ttp://tukasa.sakura.ne.jp/a-train3d/joyful.cgi
*先頭にhを追加し、アドレスバーに貼り付けてアクセスしてください。